ネラッタは自分が今まで遊んで来たカードゲームの中でも1番思い入れがあり、また愛したゲームでもある『ファイブシー』という、今から35年前に発売された国産ゲーム(当時大会が行われるほどのブームだったようです)の、ある上がり役を特化させて作りました。
ここで「ファイブシー」がどんなゲームなのか一言でいうと、
『二人用UNO』ですw(リメイクされた新版では2-5人までプレイ可能)
※ここでは旧版の《クラシック》と呼ばれる公式戦ルールで説明します。
但しUNOよりも戦略的で色んな上がり役があるのと、独特のスコアリングが特徴です。

発売された3年後の1981年、近所にオープンした西武百貨店のおもちゃ売り場にて購入。(左・中)
4年前の2009年に発売された新版。(右)

ゲームタイトルの「ファイブシー」は頭文字が「C」から始まる「CROP」「CHAIN」「CLASH」「CHANGE」「CHANGE4」という5種類の特殊カードから付けられたと思います。
0〜9までの数字カード(赤・青・黄・黒の4色×2枚ずつ、0のみ4色×1枚ずつ)、「CHAIN」「CLASH」(4色×2枚ずつ)、「CROP」(4色×1枚ずつ)、「CHANGE」「CHANGE4」(各4枚ずつ)の計104枚。

「ファイブシー」は7枚の手札から1枚ずつ場札に対応するカード(場札と同じ色、もしくは同じ数字)を出していき(出せるカードがない、もしくは出さない場合山札から1枚引く)、最後の1枚を出すときに「チェイス」(UNOでいうウノ)と宣言して上がる「チェイス上がり」とさまざまな上がり役を作って手札をなくす上がり方があり、全部で9ラウンド行います。
この「CHAIN」は場札の色と同じなら出すことができ、CHAINが場札なら他の色のCHAINも出すことができます。複数枚あれば自分の手番で一気に出して上がることも可能です。

「CLASH」は場札の色と同じなら出すことができ、CLASHが場札なら他の色のCLASHも出すことができます。このカードは相手に山札から2枚取らせるカードで、続けて相手もCLASHを出すと、逆に自分が4枚取らされることになります。つまりCLASHが続けて交互に出されると、最後に出された方が2のその回数乗(2×2×…×2)の枚数を山札から取ることになります。

「CROP」は麻雀でいうドラのようなもので、抜き札(場に出さずに脇に抜いて置く)として使用でき、その時山札から1枚引きます。場札と同じ色ならそのまま場に出すこともできます。もし上がることができれば、1枚につき勝ち点1点が加算され、一人で4枚抜き札にして上がると特別に勝ち点6点が加算されます。(旧版ルール)

「CHANGE」は場札に関係なく(但し場札がCLASHもしくはCHANGE4の場合を除く)出すことができ、色を指定できます。また場札がCHANGEのとき、手札に同じ数字のカードの3枚組(THREE CARD)があれば1度に出すことができ、その3枚のカードの一番上が次の場札になります。またTHREE CARDで上がると勝ち点2点が加算されます。

「CHANGE4」は場札に関係なく(但し場札がCLASHもしくはCHANGE4の場合を除く)出すことができ、色を指定できます。さらに相手に山札から4枚取らせることができます。但しその相手が『0』を続けて出すと逆に相手に山札から4枚取らせることができます。つまり、CHANGE4が出されたあとに0が出され、続けて相手が0を出してきた場合、最後に0を出された方が山札から4枚取ることになります。

1〜9の数字カードが4色×2枚あるのに対して、0だけは各色1枚ずつしかありませんが、(新版は2枚ずつ)先程の最強カードCHANGE4に対抗できる唯一のカードなので、このゲームでは自分的にこの『0』が一番強力で重宝するカードだと思っています。

このゲームは上がった者に与えられる勝ち点というものが存在し、あとで説明する「SNIPE」、場札が最初の1枚しか出ていない時に「SNIPE」で上がる「OPEN SNIPE」(20点)、「CROP」(1枚1点、4まいで6点)「THREE CARD」(2点)、1ラウンドから9ラウンドまで連続して上がると各ラウンドの勝ち点とは別に勝ち点10点が与えられる「PERFECT」、そして写真にある残り点の差による勝ち点。
数字カード、5種類のCカードにはそれぞれ残り点というものがあり、全9ラウンド終了時に上記の勝ち点と残り点差による勝ち点の合計の多い方が勝者となります。また、9ラウンドまでの残り点の合計が多い者が全ラウンドを通してラウンド最高残り点を取った場合に、残り点の少ない者に勝ち点1点が与えられる「PENALTYペナルティ」があります。

旧版ではこのようにスコアリングしていきます。7ラウンド目のPLAYER Bの82点が上述の最高残り点となり、PLAYER Aにペナルティとして勝ち点1点が加算されます。
またラウンド中に残り点の合計が100の倍数になった場合、残り点の合計を半分にすることができる「JUST HALF」というものもあります。

新版になってカードデザインが変わりましたが個人的には旧版が好みです。

旧版では2人専用だったのが新版では2〜5人まで遊べるルールが追加され、2人ルールでもラウンド数が短くなったようです。但し旧版のルールは最初にも説明しましたが、現在「FIVE C クラシック」として「公式戦ルール」になっています。

最後に紹介するのが、手札が3枚以上あって数字カード及び0カードだけで構成されている場合、その数字の合計(0は0として計算)が場札の数字と同じになれば、場札の色に関係なく「SNIPE(スナイプ)」と宣言し、その場で上がることができる上がり役、「SNIPE(スナイプ)」です。
この上がり役で上がった場合、プレイヤーの手札の枚数から2を引いた勝ち点が与えられます。(新版では上がった時の手札枚数がそのまま得点になります)
写真のケースでは6枚−2で勝ち点4点。
「ファイブシー」は手札の上限がないので場札が8か9なら、最高10点(0が4枚と1が8枚、もしくは0が4枚と1が7枚と2が1枚)の勝ち点がw
【ネラッタを作るきっかけ】
ずいぶんと前置きが長くなりましたw
趣味で自作してしまうほど「ファイブシー」が好きで、その一番の醍醐味でもある「SNIPE(スナイプ)」という上がり役を特化させた新しいゲームを以前から考えていました。
簡単なルールと少ない手札、また手札が増えないようにすることで、小学生でも遊べて短時間で終わるスピーディな展開が楽しめるゲームができないものかと。
【ネラッタをどんなゲームにするか】
@2人対戦専用
Aお互いが攻撃と防御を交互に繰り広げる格闘カードゲーム
B可能な限りシンプルなルールに
C50枚前後のカード枚数
1.とにかく2人用のカードゲームが好きなのと短時間で繰り返し遊べるゲームを作ってみたかったので。
2.イメージしたのはボクシングで、「反撃」という概念はボクシングで言うカウンターです。
3.一度プレイしたことのある「YOMI」というゲームがとても面白く、3すくみの攻撃関係が見事に再現されていました。10人分のキャラクターデッキがあるので全部使いこなすのは大変ですが、基本は3すくみというシンプルなシステムなので数をこなせば、より深く楽しめそうなゲームという印象でした。
ネラッタは10ポイントの体力を削り合うゲームで、5種類の攻撃方法によって相手の体力を0にする、もしくは2回目の山札の終了時に相手より残っている体力が多ければ勝ちという、分かりやすいルールにしました。
4.「ファイブシー」は104枚というカード枚数のため、9ラウンドも行うシャッフルが大変です。
今では「カードシャフラー」という便利グッズもあるのでこれを使えばシャッフルの煩わしさは解消されますが、カードゲームの手軽さと言う点において持ち運びには不向きですね。
ネラッタは当初、数字カードが0から7まであり、赤・青・黄の3色×3枚で計72枚でした。
「SNIPE(スナイプ)」という上がり役をアレンジするのに、3枚以上の手札による数字の合計にするとそのままなのと手札をなくすゲームではないので、手札からぴったり3枚でその数字の合計と場札が一致した場合のみ出せるということにし、ゲームタイトルにもなった「ネラッタ」という攻撃方法ができましたが、72枚のカードは多すぎました。
小さいお子さんでも持てるようにと手札の上限を5枚、またそれ以上増えないようにしたために山札はなかなか減らず、手札の回転率も上がらなくて派手な展開に恵まれず、思い切って数字カードを0から5までにしたことで一気に計54枚まで減らすことができました。
【ネラッタのカードデザイン】
前作の「ぴったりヤドカリ」、前々作の「OSU」でイラストを手掛けて頂いたイラストレーターの「かわさきみなさん」が多忙であったのと、ネラッタにはテーマがなく予算もなかったので、数字だけで勝負することに決めました。
ではどのようなデザインにするか?
カードデザインで最重視したのは視認性でした。
まず浮かんだのができる限り数字を大きくし目立たせること。
イメージとしてはスロットマシーンに使われているようなデカデカとした迫力のあるもので、赤・青・黄という3色を引き立たすことのできる色は「黒」しかないと思いました。
そう、スロットマシーンが設置されているカジノなどはフロアの照明を暗くしているのでぴったりだと。
これは別の機会に書く予定の「ナランダ」にも言えることです。
当然ながら、汚れはバックが「白」の方が目立ちますが、キズの場合は圧倒的に「黒」が目立ちます。
それでもイラストも無いもない地味なゲームなだけに、インパクトのある黒にしたいという強いこだわりがありました。
中央の数字を目立たさせ、4すみにもトランプと同じように数字を入れて、各色にシンボルマークという目印も加えました。
色弱の方でも判別できる「ユニバーサルデザイン」を目指したつもりです。
「0」は「0」なのでシンボルマークの色は無色にしてみました。

余り凝ったデザインではありませんが見やすくて気に入っています。

裏面はできるだけ地味にしながらもデジタルっぽいフォントで「NERATTA」と「NARANDA」をミックスし、さりげなくブランド名の「GAME NOWA」も入れてみました。
今年のGM2013大阪の体験卓で使用した折りたたみ式得点ボードは予算的に組み込めない状況でしたので、カードを並べてそれぞれ別々にゲームの得点が表示できるようにしました。
「ぴったりヤドカリ」でお世話になった印刷屋さんの価格帯では1セット48種類を超えると次は72種類まで跳ね上がるので、「ネラッタ/ナランダ」の数字カードが54枚、これにネラッタ用の得点表示カードが5枚、ナランダ用が6枚の計11枚を加えて総計65枚のカードゲームになったわけです。

格ゲーの体力ゲージをイメージした「ネラッタ用」の得点ボード。

スコアマーカーのキューブサイズに合わせてできる限り小さくした「ナランダ用」の得点ボード。

GM2013大阪の体験卓で使用した折りたたみ式得点ボード。
おかげさまで開催できた「ネラッタ/ナランダ大会」の優勝商品用にも用意し、結局計6つ作った得点ボードはその後もゲーム会でお世話になっている方々に差し上げたりして全部無くなりました。もう作らないと思いますので、ある意味レアかもw
【ネラッタというネーミング】
新版の「ファイブシー」のパッケージのウラ面には一言、
「そのカードを狙い撃て。」
とあります。
まさに「SNIPE(スナイプ)」を物語っているのではないでしょうか?
その「狙い撃つ」はチャンスを待ちつつ、ここぞという時に相手に対して強攻撃を放つために、「狙ったチャンスを見逃すな!」という意味を込めて「ネラッタ」と簡単に決まりましたw
【ネラッタのパッケージデザイン】
自分は絵心が全くないのでパッケージデザインにはかなり悩みました。
プレイ写真をメインに〈オモテ面〉に持ってきてどんなゲームかアピールするのは、恥ずかしながらカメラにも疎いのでまず無理だと判断し、「ネラッタ」と「ナランダ」という2つのゲームが「ネラッタ/ナランダ」1つで遊べる(当たり前ですがw)ということを強調しようと考え、ツートンカラーでいくことに決まりました。
メリハリを付けたかったので「白黒」「赤白」「黒赤」「黒黄」「青赤」「青白」「青黄」など。
明度で対比させることも考えましたが、「青赤」に決定。厳密には青(C:80 M:5 Y:10 K:0)、赤(C:0 M:100 Y:0 K:0)をメインして色相で対比させ、タイトルを始め必要事項は全て白に統一して 「トリコロールカラー」 に似せてみました。

彩度を対比させてみたもののボツにしたパターン。

青赤のツートンカラーになった製品版。
〈ウラ面〉はオモテ面で唯一使わなかった3色のカードの黄色(C:0 M:0 Y:100 K:0)を持ってきたので、テキストの色も黒を避け、こげ茶(C:57 M:60 Y:64 K:42)にして読みやすくしました。
さらに、使用する0から5までのカードを1列に並べたり、友人宅で最近買ったカメラを借りて撮影したプレイ風景も使い、「2人用」ということも強調したかったので
「2人だから、おもしろい」
というキャッチコピーも強引に突っ込みましたw。
また人気ボードゲーム系Podcast 『フランとアバンと仲間たち』でおなじみのメインパーソナリティ、「アバンさん」には番組内で「ネラッタ/ナランダ」を紹介して頂いて大変お世話になったお礼も込めて、「フラアバ」のクレジットタイトルも入れさせて頂きました。

アバンさん、その節は本当にお世話になりました!!
【ネラッタのゲームシステム】
《ネラッタの攻撃方法》
@ミスッタ(ダメージ0):場札に関係なく手札から1枚出す
Aラッタ(ダメージ1):同色同数字2枚組を出す(但し「4」「5」のシンボル付きは1枚でラッタ扱い)
Bネラッタ(ダメージ1):場札の数字と出した3枚の手札の数字の合計が一致
Cハネラッタ(ダメージ2):出した3枚の手札が全て同色によるネラッタ
Dクラッタ(ダメージ2):場札に関係なく手札から同色同数字3枚組を出す
5枚という手札上限の中、それを越えない範囲で共通の山札からカードを引き、お互い攻撃と防御を繰り返しながら相手の体力を0にすることを目指すゲームですが、「ネラッタ」はただの運ゲーだと言われることがあります。
手札が5枚と少ないので選択肢が限られ、1枚で出すケースが多いということのようです。
それは何故か?
「ファイブシー」も運の要素が多いと言われますが、「ファイブシー」のように場札に出すカードがなければ、もしくは出したくなければ、パスして山札から1枚引いて手札が増えるようなことが「ネラッタ」にはないために5枚の手札では回転率が悪く、「ミスッタ」としてノーダメージカードを出したり、「4」「5」のシンボル付きは1枚で相手にダメージを与えられるため、手札の偏り次第では一方的な展開になりかねない点にあると思われます。
ただ当初はシンボル付きというカードはなく、これがないと手札に「4」「5」というhighカードばかりでは、「ミスッタ」として場に出すしかなく、相手の「ネラッタ」や「ハネラッタ」の格好の餌食になるだけでしたので、「4」「5」の2/3をシンボル付きにすることで「ラッタ系vsネラッタ系」という構図もでき、逆に「4」「5」が脚光を浴びることになりましたw
《反撃》
「ファイブシー」でいう「0返し」(CHANGE4に対して0カードを出すことで逆に相手に山札から4枚引かせる)が「ネラッタ」でいう「反撃」で、「ハネラッタ」と「クラッタ」以外は対象の数字カードと同じ数字カード(色は関係なし)を出すことができたら反撃成功とし、さらに同じ数字カードを出すことで再反撃も可能としました。
当初、相手の攻撃に対して反撃するにはどうしたら面白くなるのか、いくつかのパターンを考えてみました。
@反撃対象のカードに対して同色なら反撃成功
A反撃対象のカードに対してその数字より大きければ反撃成功
B反撃対象のカードに対して同色もしくは同数字なら反撃成功
C反撃対象のカードに対して同色同数字なら反撃成功
D反撃対象のカードに対して同数字なら反撃成功
1.全体の1/3が同色なので余りにも容易に反撃が可能。
2.「4」「5」というhighカードがより一層強くなる感が否めない。
3.@よりもさらに反撃が可能になりすぎる。
4.「ラッタ」「ネラッタ」とその上位攻撃に位置するとの差別化を図るために「ハネラッタ」の反撃条件として採用。
5.全体の1/9が同数字なので確立的にも丁度良いと判断してこれを採用。
また、「クラッタ」(同色同数字3枚組)という最上位攻撃に関しては、色違いのクラッタ(例:赤3のクラッタに対して青3、または黄3のクラッタ)でしか反撃できないようにし、同じダメージ2を与える「ハネラッタ」よりもさらに反撃条件を厳しくしたので、より一層差別化を図ることができたと思います。
【ネラッタの改訂ルール】
長々とお付き合い頂きまして本当に有難うございます。
これが最後のテーマですw
製品化して数カ月が経ちましたが、「ネラッタ」と「ナランダ」のプレイ比率はおそらく 2:8 くらいであろうと受け取っています。
理由は先程と重複しますが、やはり手札上限が5枚であるために選択肢が少なくて運ゲー感が否めないのと、シングルカードを出す機会が多いと単調になり得る点に尽きると思われます。
このままでは特に「ネラッタ/ナランダ」をお買い上げ下さった方々に申し訳なく思い、
『ネラッタ-改-』という改訂ルールを考案しました。
1.手札の枚数を5枚から6枚に変更
2.連続攻撃
3.クラッタのダメージを2点から3点に変更(2014.4.7 追記)
詳しくはこちらをお読み下さい。
■お礼
お気付きの方もいらっしゃると思いますが「ネラッタ」は3組のトランプで何度もテスト調整を行って完成したゲームです。
この「トランプ」を使用することに気付けたのは、Twitterのタイムラインで海外のトランプゲームに精通されている、じゃんごさんやゆうりさんという方々のやり取りを見る機会があり、そこからトランプゲームに以前よりも興味を持つようになれたからです。
また「ぴったりヤドカリ」に引き続き、「ネラッタ/ナランダ」を唯一取り扱って頂いている「ボードゲーム専門店 ゲームフィールド」様、そして高校時代からの友人で、最後まで懲りずにテストプレイに付き合ってくれたたった一人の良き理解者、Mr.OI氏にはこの場を借りてお礼申し上げます。
いつもお世話になりまして本当に有難うございます!!
■お知らせ
現在、京都烏丸にある 「Art Community Space AKIKAN」にて開催中の「創作ゲームのアートワーク展 2013 KYOTO」(7/1〜7/26)で「ゲームNOWA」も次の2作品を展示中です。
ぴったりヤドカリのモビール
自身初の投稿で搬入前に自宅にてiPhoneで撮影しましたw
ナランダ ならんだ あか あお きいろ

「ナランダ」の上がり役の変化をA2大のポスターで表現してみました。
他にもこれらとは比べ物にならない素敵な数多くの作品が展示されていますので、この機会に是非お立ち寄り下さい。