この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2017の24日目の記事として書かれました。
5年ほど前からアナログゲーム製作にハマり、今年の9月に様々な事情がグランドクロスのように重なったことで、気が付けば20年勤めた職場を退職していたゲームNOWAのかぶけんと申します。
遡ると、2012年のゲムマ大阪の開催がオリジナルのゲーム製作を始めるきっかけでした。
それに参加して以来、これまでに体験したものづくりの楽しさや交友関係の広がりが、今では財産になっています。
前置きはこれぐらいにして、今回はボードゲームに欠かせない、コンポーネント(部品とかそういう意味合いだと思っています)について、今まで私が遊んだ中で「これは‼︎」と思ったものをいくつかご紹介します。
【ボーナンザ】
ウヴェ・ローゼンベルグの代表作の一つで、8種類の豆が描かれたカードを、自分の畑に植え、育て、それを売ってお金を稼いでいくカードゲームです。
「手札の順番を決して変えてはいけない」というゲームシステム。今でもその斬新なアイデアは色褪せることがないのですが、私が感心したのは、カードの裏面にお金(金貨)が描かれていることです。
これによって、お金に変わるチップ等のコンポーネントを用意する必要がなく、カードだけのコンポーネントで事足ります。
良いアイデアだと思います。
【宝石の煌き】
マーク・アンドレの処女作にして今もロングセラーの代表作。5種類の宝石チップとジョーカー的役割の金塊チップ。そして3段階の難易度があるカードが4枚ずつ並んだ場札とランダムに並んだ勝利点付きのボーナスタイル。
自分の手番に宝石チップを1枚ずつ3種類か同色2枚取る。もしくは場にあるカードを宝石チップで購入。又は場のカードを金塊チップでキープするか。
カードはそれぞれコストが異なり、そのコストは宝石チップや金塊チップ、また購入したカードに描かれた1種類の宝石を組み合わせたりして支払う。カードには勝利点付きのものがあり、15点という勝利点を誰かが獲得したら、そこから1巡し、最も多い勝利点を獲得したら勝利という、シンプルなシステムでありながら、拡大再生産が楽しめる作品です。
もっと手短に説明出来れば良いのですが、高級感のあるずっしりとした、このチップがコンポーネントとして素晴らしいのです。
プレイ毎にチップ同士が重なり合って、カチカチと響き渡る音色がたまらないです。
このチップが紙製のタイルだったら…
考えたくないくらい、このチップは最高です。
【マラケシュ/ズライカ】
ゲーム自体はとても面白いとは言い難いのですが、プレイ中、絨毯に見立てた綺麗な模様の布切れをボードに敷き詰めて行くところが良い雰囲気を醸し出してくれます。また全員で共有するアッサムと呼ばれる木製のプレイヤー駒の可愛らしさ、あと、お金まで木製なのが嬉しいです。
【ガイスター】
アレックス・ランドルフの2人用対戦ゲーム。6×6マスのボードに、お互い4匹の良いオバケ(青)と4匹の悪いオバケ(赤)の計8匹を指定内のマスに、好きなように並べて、手番には1匹を縦又は横に1マス動かし、相手のオバケのいるマスに止まるとそのオバケを取れるのですが、青か赤かは相手にしか分からないようにオバケの背面に表示されています。
勝利条件は
・相手の良いオバケ(青)を全て取る
・自分の悪いオバケ(赤)を相手に全て取らせる
・自分の良いオバケ(青)を1匹、相手側の両端にある出口の何れか一方から脱出させる
また長々と説明してしまいましたが、このオバケ駒の造形がとても良く出来ています。
またオバケといえば、『オバケだぞ〜』という、オバケの印が描かれたダイスを使った双六ゲームがあります。プレイヤー駒の頭の仕掛けがあり、振ったダイス目がオバケだった場合、オバケにされてしまいます。そしてゲームが進むにつれてどんどんオバケが増えて行きます。最後に自色のプレイヤー駒を上手くゴールさせることが出来るか。
このオバケ駒はプレイヤー駒と同様に木製で駒自体が筒状になっており、プレイヤー駒に被せると磁石でカチッとくっ付くようになっているのがとても良いです。
他にもギミックが凝っているもの等をあげていくと、キリがないくらい、ボードゲームのコンポーネントはワクワクするものが多いです。
また最近では私のぱっと見だけの判断なのですが、『サイズ - 大鎌戦役 - 』『クトゥルフウォーズ』といった大箱にぎっしり入ったフィギュア等もアナログゲームならではの魅力の一つかと思います。
国産(インディーズも含む)ゲームにも「これは‼︎」というものに出会いました。
・ホシリンピック(大気圏内ゲームズ)の洗濯スタンド
・チューリップ・バブル(ぐうのね)のチューリップマーカー&スタートプレイヤーマーカー
・ハコオンナ(EJIN研究所)の物音チップ
・TOKYO HIGHWAY(itten)全てのコンポーネント
・マムマムマーガレット(ノスゲム)全てのコンポーネント
・朧ニンジャスタートリック(モグワイ)の手裏剣駒
・グラギャモン(ハッピーゲームズ)の布ボード
今後も色々出てきそうな予感がします。
ここからは拙作の宣伝にもなっていますので悪しからずm(_ _)m
ただ私が今までコンポーネントにこだわってきたことが、これからゲーム製作を始められる方々のヒントの一つにでもなれば幸いです。
【エルタイルズ】
L字形のタイル配置陣取り(陣広げw)ゲーム。
初版はマグネットシートをL字型にカットし続けた結果、腱鞘炎に。完治するまで9ヶ月掛かりましたw
その後新版を発表。このゲームのために金型を作り、PP加工したタイルは発表当時、別名ペロペロ加工(ペロペロしたくなるくらいの光沢さw)とも一部で呼ばれたりして話題になり、また今思えば衝立でも良かった手折りのタイルスタンドも好評でした。
【三忍者】
手札3枚以上で手役を作り、手役を複数重ねることで相手に大ダメージを与えてHPを0にするカードゲーム。
化粧箱には和物を意識した簾箱を使用。
ダメージ表記は忍者グッズショップで購入した、手裏剣型の消しゴムを必要枚数分、超薄刃用のカッターナイフでカット、その後エルタイルズ以来の腱鞘炎に。
ただ購入して頂いた方には大好評でした。
今までが長い前置きで、ここからが本題というか、書きたかったことです。
【戦国ドミノ】
GM2017秋に出展した、ゲームNOWAの最新作で、ドミノタイルのダイス目を戦国風にデザインし、ドミノ配置のルール(この作品ではシート上に配置済みのタイルのマークと、少なくともタイルの片方が同じマーク同士で隣接するルール)と、3種類のバッティングシステムでエリア毎のマジョリティを争い、勝利条件を満たしたプレイヤーが勝つというタイル配置ゲームです。
実はこの作品は製作費の3/5を融資して下さったNさん(プロデューサー)がいたおかげで製品化することが出来ました。
テスト当初はノンテーマのタイル配置ゲームでしたが、戦国時代をテーマにすることで様々なコンポーネントが必要になってしまったのです。
■ボード(シート)
エリアのマジョリティをそれぞれどのプレイヤーが獲得したかを示すマーカーはシートの外ではなく、シート内に収めて欲しいという意見がテストプレイ中に出ました。
これを妥協すればコストが掛かりますが、シートではなく、印刷所さんの既存のテンプレートでボード化することも出来ました。ただどうしてもボード内に収めたかったのと、大きなサイズのボードは予算的に厳しかったこともあり、2枚のシートを組み合わせて1つのシートになるようにしました。
しかしこの部分が製品版の完成間際まで気になる箇所でした。
ボードと違って折り目で段差が出来るため、プレイアビリティが損なわれるのが否めなかったからです。
(気になる方はシートの裏面から戦場一と戦場二の195o間隔に、190-192oくらいの長さの製本テープを貼ることで解消されると思います。)
それと実際の仕上がりを見るまでそのクオリティが予想し辛かったこともありました。
またこのシートのデザインに行き着くまで、かなりの試作を重ねました。
1番苦労したのは、シートにタイルを配置する順番を競りで行うようにしたことで、それを常に管理する盤面のデザインスペースが小さくなってしまったことでしたが、結果的には少なくとも自分にとっては満足のいく仕上がりでした。
■花トークン
当初はゲームに登場する4勢力の家紋をあしらったチップを用意していましたが、それだとマジョリティを表すアイテムとして、只でさえドミノタイルだけでも派手なのに、最終盤面が更に派手になり過ぎることで断念。
代わりに必要最低限の木製キューブをエリア(全4箇所)が進む度に回収して使用することにしたのですが、それだと最終盤面を写真に残したいと思ったときに、若干見栄えが落ちるので、やはり予定個数の木製キューブが欲しいということに。
ただそれだとコスト的に厳しかったため、こちらも断念。
しかし、三忍者の試作中に使用していたクラフト用の花型ビーズが、この作品の勝利条件でもある、『城に自色の花を咲かせる、自分の勝ち取った花道に自色の花を咲かせる』にぴったりだったこと。また、上記のシートの項にあった、盤面のデザインスペースの小ささにも上手く対応。
手番順、配置順を管理するシート上には、タイルの戦力値を表す『1-11』のマスと、バッティングすると花トークンを重ねて手番順が後回しになり、『×』(バッティングマス)に移動させられるのですが、その際、花型ビーズ同士がカチッとハマるので、移動中に落ちることがありません。
これは結果的に大発見でした。
■城駒
こちらは箱裏や説明書にも無いコンポーネントで、特に無くてもゲームに支障をきたすことはありません。
しかしNさんが、一度面識の無い方(実は私は過去に一度お会いしたことがあり、その後も一度コプラスの試作中に相談させて頂いたことがありました)と直接交渉し、急遽、コンポーネントの1つとして加わりました。
この立体的なコンポーネントが加わったことで、今でいう『インスタ映え』効果も高まりました。
■衝立(ついたて)
自分の手札となるドミノタイルを自分だけが見れるようにするコンポーネントで、外側には家紋、内側には各勢力の全ドミノタイル18枚(3人戦では16枚、4人戦では15枚使用)を18人の家臣名とパッケージと同じ戦国大名のイラスト、勢力地を表記しました。
■ドミノタイル
この作品の華でもある、タイルは通常のドミノタイルと同サイズで作成し、家臣となるタイルには戦力を表す1-6の数値をダイス目ではなく、それぞれ刀や旗、鉄砲等のマークで表しました。
また家臣タイルと差別化した『総大将タイル』には家紋とその人物名を表記しました。
■パッケージ
パッケージイラストは現在連載中のWEB漫画『ごいたのヨシフ』の作者、中瀬麻衣さんに手掛けて頂きました。これは後で知ったことですが、Nさん曰く、当初からお願いする予定だったそうです。さすがはNさん。
最後になりましたが、ボードゲームは良いテーマやシステムを見つけることで、たしかに苦労することも多々ありますが、思い掛けないアイデアが浮かんだりすると、人一倍完成した時の感動は大きいものです。
また、その作品を遊んで下さった感想を目にした時の嬉しさは格別です。
是非一度味わって下さい。
私のようにボドゲ製作沼にハマりますからw
2017年12月24日
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